極上な彼の一途な独占欲
ほっといてよ!

仕方ないじゃないか、控え室は片づけてしまったし衣装ももう全部運び出した。そして帰るわけにもいかないのだ。今夜はホテルで打ち上げパーティがあるから。


「部屋で休んでたら?」

「クライアントがまだ仕事してるのに、それも気が咎めて…」

「そのクライアントに、邪魔だって追っ払われたんでしょ」

「う…」


なにかできることがあればと残っていたんだけどなあ。

私は頭を切り替え、おとなしく部屋で打ち上げまでの時間を過ごすことにした。


「帰るわ、じゃあね」

「うちのホテルに寄っていきなさいよ。バーで一杯やりましょ」

「おごってくれる? 社長様」

「あんたのそういう飾らないところが、けっこう好きよー」

「伊吹さんはどうしたのよ、浮気者」


私の頭をボールみたいに持って、すりすり頬ずりしてくる。

見た目が完璧にいい男なだけに、これどう見えてるの、とこっちが混乱した。


「伊吹さんもすてきだけどね。あたし、女の子がダメなわけじゃないのよ」

「え、そうなの? 恋愛対象として、男も女も両方ありってこと?」

「そう」

「それじゃ年中、恋ばっかり芽生えて大変じゃない?」


自分のすったもんだがあっただけに他人事でなく、心配になってしまう。

神部はきょとんとした。


「なんで恋が芽生えると大変なのよ?」

「だって…いろいろ、おろそかになったりしない?」

「あんたがそうだってだけでしょ。一緒にしないでよ」


えっ、やっぱり私だけなの、そういうのって。

考え込んでしまった私の頬を、短く整えられた爪がつつく。こんなところまで徹底してメンズ仕様だ。
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