極上な彼の一途な独占欲
神部の気配が遠ざかるまで、私は伊吹さんの背中にぴったりくっついて立っていた。

やがて冷ややかな声が降ってくる。


「お前…」

「すみません、大丈夫です」

「どこが大丈夫だ、そんな動揺しといて」

「調子が狂っただけです」

「それを動揺と言うんだ」


伊吹さんが身体をこちらに向けた。

私は真っ赤になった耳を両手で隠し、神部のバカ、と心の中で罵った。せっかく伊吹さんと幸せなのに、私の心、乱さないでよ。

伊吹さんが呆れ顔でため息をつく。


「ほんとにこういうの、免疫ないんだな」

「面目ないです…」

「週末、空いてる?」

「え?」


耳を覆っていた手を外された。代わりに伊吹さんの手が、私の耳をくすぐる。


「会おう」


突然向けられた微笑みに、私は言葉もなく、こくこくとうなずいた。


「どこか行きたいところがあれば」

「あっ、あの、じゃあ…伊吹さんの家に」


そっとしたキスに、口をつぐんだ。

前髪が触れる距離で、伊吹さんが私の目を覗き込む。


「"尊"」

「…た、たけ、るさんの家に、行きたいです」

「やり直しだな」

「た、尊さんの家に」
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