極上な彼の一途な独占欲
「あのシートももらったんですか?」

「さすがにあれは違う。前乗ってた車につけてたのを、捨てがたくて引き取ったんだ。限定モデルで、もう買えないから」


男の子の思考だ。

言わないだけで、やっぱり車にも、心の中では名前をつけていたりするんじゃないだろうか。


「家の中で、一番お気に入りの場所、どこですか?」


人の家にお邪魔したとき、必ずする質問である。

私はお財布とか、バッグの中身とか、その人の思考が表れるものを見るのが大好きで、女の子たちもポーチの中身を見せてもらえばだいたいどんな子かわかる。

伊吹さんは考えたこともなかったようで、部屋の戸口に寄り掛かって、うーんと腕を組み、「そうだなあ」と悩ましげな声を出す。

ちなみに私は、お風呂だ。

なかなか答えを出せずにいた伊吹さんは、はたと私と目が合うと、なにかいいことを思いついたみたいに、にやっとした。


「今は、ベッドかな」




伊吹さんの裸って、きれい。

目の前にある、喉から鎖骨にかけてのラインを眺めて思った。

すっと伸びた鎖骨、それが肩とぶつかる位置に浮き出ている骨。そこから続く肩と腕の、しなやかな筋肉。

じっと見ていたら、「なんだ」と眉をひそめられてしまった。


「ちょっと観察していただけで」

「観察?」

「職業病かも」


人の骨格や肉の乗り方が気になる。これは今の仕事に就く前はなかった習性だ。

ベッドにうつぶせて煙草を吸っていた伊吹さんは、興味のなさを隠そうともせず「そうか」とおざなりに言った。

さっきまでは甘かったのに。
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