極上な彼の一途な独占欲
まあ、そうですが。

いかにも大衆食堂という味のカレーは、不思議といくらでも入る。そうゆっくりしていられないこともあり、私はせっせとスプーンを口に運んだ。


「…よく食うな」

「体力勝負なので」

「いくつだ」

「体重ですか?」


教えられないこともないけれど、不躾もここまで来るとすごいな、と眉をひそめて向こうを見たら、同じかそれ以上にひそめられた。


「…年齢だ」


あっ…歳か。


「ええと、28になりました」

「なんだ、意外と近いな」

「伊吹さん、おいくつですか?」

「今年31になる」

「えっ」


つい驚きが口から出てしまい、「えってなんだ」と怪訝そうな顔をされる。

いえ、思っていたより若いというか、そもそも年齢の想像があまりついていなかったというか、ちゃんと年齢、あったんですね、みたいな気分で。


「…こんな大きなショーの責任者としては、お若いほうかなと」

「普通だろ。天羽は28か、もう少し下かと思ってた」

「生意気な小娘だとでも?」


歳より若く見られるのは、嬉しいときもあれば複雑なときもある。仕事の場では特に、無邪気に喜んではいけないと思っている。

伊吹さんのことだから、私のことなんて大学出たての苦労知らずくらいにしか思っていなかったんだろう。

どうせね。

ふんとかわいげのない態度をとってみせた私に、なぜか彼はなにも言わない。あら、怒らせたか…とちらっと目で対面を探って、目を疑うはめになった。

伊吹さんは微笑んでいた。それも少し困り気味に。
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