極上な彼の一途な独占欲
「…元気のいい女性だなと思っていたんだ」

「あ、えっと」


予想外の表情を見せられて戸惑い、口ごもってしまう。


「それは、ありがとうございます」

「どうして今の仕事を?」

「社長の三好に誘われて。学生時代の友人なんです」

「誘われる前はなにをしていたんだ」

「面接ですか?」


いつの間にか食べ終えていた伊吹さんが、テーブルに頬杖をついて笑った。


「そう思ったほうが答えやすいなら、思ってもらってかまわないが」


思わずスプーンも止まるってものだ。

そんな顔で笑わないでよ…。まるで私と一緒にいて楽しいって言っているような笑顔なの、自覚あります?

私、図に乗りますよ?


——俺は、あんたを嫌いじゃないよ。

——むしろ…。


あの続きを意識しないように、必死にこの二週間生きてきたんですから。不用意なことするのやめてもらえます?

そうちょっぴり甘酸っぱい気分に浸った直後。


「じゃあ、お先に」


えっ、と我に返ったときには、正面の席には誰もいなかった。見回せば食器の返却口に、背の高い後ろ姿。

ちょっと! 私だってもうすぐ食べ終わるのに、ここで置いていく!?

あれは嫌がらせじゃない、素だ、絶対。マイペースな男め…。

またしても踊らされたのが悔しい。いや、私が勝手に踊っているだけなんだけれど。それでも悔しい、悔しい。

見ていなさいよ伊吹尊!と意味もなく宣戦布告し、私は残りのカレーを一気に片づけた。

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