極上な彼の一途な独占欲
「加減しなさいよ、馬鹿力!」
「伊吹さんに紹介してくれたらね」
「もう名前まで調べたわけ」
「ちょっと聞きまわったら、有名だったわよ。ドイツの本部に研修に行くことを許されたエリート中のエリートで、帰ってきてまだ二年ほどなんですって」
「へえ」
「彼と仕事したことのある人が、エルケーニヒって呼んでたわ」
「なにそれドイツ語? どんな意味?」
「魔王」
最上級なのが来た。
「日本の販売を立て直せって使命を負って戻ってきて、一年で目標を達成したらしいわよ。店舗の統合、店長の入れ替え、セールス育成の見直し、どれだけ恨み買いながらゴリゴリやったのかしらね」
ため息をつきながら、熱っぽい目つきでステージ横にいる伊吹さんを見つめている。そういうのが好きだったのか、こいつ…。
「あ、行かないと。じゃあね、うちのブースも見に来てよ」
「うん、お疲れ」
今年神部の会社が担当しているのは、大手国産メーカーのブースだ。面積も広く予算も莫大なため、動かしているコンパニオンの数もすごい。個人の質じゃ負けていないことを確認しに、後で見に行ってこよう。
そんなことを考えつつひらひら手を振って見送り、ブースに目を戻したら伊吹さんがいなかった。
あれ?
「和、洋、中、どれがいい」
「きゃあっ!」
いきなりすぐ近くから声がして、仰天した。
見送っていたのと反対側の隣に、いつの間にか伊吹さんが現われている。
「は、え、和…?」
「洋ならこのへんだと、イタリアンかスパニッシュ。微妙に僻地だから、そんなに選択肢がないんだよな」
ブースに目を向けたまま、少し抑えた声でそんなことを。秘密の約束という感じがして、私は落ち着かない気分になった。
「伊吹さんに紹介してくれたらね」
「もう名前まで調べたわけ」
「ちょっと聞きまわったら、有名だったわよ。ドイツの本部に研修に行くことを許されたエリート中のエリートで、帰ってきてまだ二年ほどなんですって」
「へえ」
「彼と仕事したことのある人が、エルケーニヒって呼んでたわ」
「なにそれドイツ語? どんな意味?」
「魔王」
最上級なのが来た。
「日本の販売を立て直せって使命を負って戻ってきて、一年で目標を達成したらしいわよ。店舗の統合、店長の入れ替え、セールス育成の見直し、どれだけ恨み買いながらゴリゴリやったのかしらね」
ため息をつきながら、熱っぽい目つきでステージ横にいる伊吹さんを見つめている。そういうのが好きだったのか、こいつ…。
「あ、行かないと。じゃあね、うちのブースも見に来てよ」
「うん、お疲れ」
今年神部の会社が担当しているのは、大手国産メーカーのブースだ。面積も広く予算も莫大なため、動かしているコンパニオンの数もすごい。個人の質じゃ負けていないことを確認しに、後で見に行ってこよう。
そんなことを考えつつひらひら手を振って見送り、ブースに目を戻したら伊吹さんがいなかった。
あれ?
「和、洋、中、どれがいい」
「きゃあっ!」
いきなりすぐ近くから声がして、仰天した。
見送っていたのと反対側の隣に、いつの間にか伊吹さんが現われている。
「は、え、和…?」
「洋ならこのへんだと、イタリアンかスパニッシュ。微妙に僻地だから、そんなに選択肢がないんだよな」
ブースに目を向けたまま、少し抑えた声でそんなことを。秘密の約束という感じがして、私は落ち着かない気分になった。