極上な彼の一途な独占欲
頬杖で半分隠れた口元が、楽しげに笑んでいる。反応を見られているのがわかったものの、私はどうすることもできず、赤い困り顔をさらしていた。


「半分と言ったのは、そういう意味だ」

「どうして私なんですか?」

「それを、話してはっきりさせたかったんだ。理由なんて、最初からそうそう明確になってるもんじゃないだろ」

「はっきり、しました…?」


まだそんなに話してはいないけれど。

煙草を灰皿に押しつけて、伊吹さんは「しつつあるよ」と教えてくれた。

予想外に聞きたいことを全部聞けてしまったので、これ以上言葉が続かなくなってしまい、下を向いてもじもじするはめになる。

そんな私をたっぷり観察して、伊吹さんが言った。


「お前、こなれた風貌のくせして、こういうの全然慣れてないんだな」


うっ!

その指摘がぐさっと胸を貫き、私はますます穴を探す気持ちが募り、うつむく。


「それなりの恰好をしていないと、女の子相手に威厳を保てないので…」

「なるほど。恋愛経験は?」

「なくはなかったんですが、基本、仕事しかしてきませんでした…」


なにを白状させられているのか。

伊吹さんの視線が、興味本位から同情ぎみなものに変わった気がする。はい、すみません、見掛け倒しです…。


「なくはなかった、というのは」

「数年前に、手痛い恋愛をしまして。まあ、酷く捨てられたというか」

「捨てるような男を、なんで好きになったんだ」

「私、ダメなんですよ、優しくされるとすぐ好きになっちゃうタイプで」


うう、今思い出しても愚かな自分がつらい。

両手で顔を覆って過去を嘆いたところに「なんだ」と声がする。
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