極上な彼の一途な独占欲
なにを言ったらいいのかわからず、ええっと、と言葉を探し「お互い月曜がオフなんですね」とわかりきったことを口にした。

伊吹さんも「そうだな」と当たり障りのない相槌を打つ。

落ち着かない沈黙が下りたのを、破ったのは彼のほうだった。


「疲れてるところ、悪いんだが」

「…はい」


私の顔には、期待がありありと表れてしまっているだろうに、伊吹さんはそれを笑うこともなく、遠慮がちにこちらを見ている。

その視線が一度、言葉を探すように右のほうをさまよって戻ってきた。


「一緒に過ごしたいと言ったら」


どうしてこういうときだけ、こんな素直に照れとか言いづらそうな様子とか、見せてしまうんだろう、この人。

ずるい。


「…つきあってもらえる?」


わずかに首をかしげて、少し申し訳なさそうに、私の意思を確認してくる。

そんなふうに言われて、ほかでもない伊吹さんにそんなふうに言われて、断るわけないじゃない。そのくらいわかっているくせに。


「はい」


言ってから、じわじわと頬が赤くなってきた。

続く言葉が見つからない。

なにも言えずにただじっと見つめ返す私を、困ったような顔で見て、伊吹さんはひとつ咳ばらいをし、私から目をそらした。


「こんな誘いひとつで、なにを緊張してるんだろうな、俺は」


そっぽを向く横顔は、きまり悪そうにむすっとしている。

私たちは、うまくその場を繋ぐこともできないまま。

「じゃあ」と彼が言葉少なに別れの挨拶をするまで、そうして佇んでいた。

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