極上な彼の一途な独占欲
「俺は話した内容を思い出せなくなるほど酔ったことなんてない」

「経験値の不足をいばらないでください」

「そっちこそ、警戒心のかけらもない飲み方しておいていばるな」

「どうしてそうカチコチなんです? ふわふわ浮かれて全部忘れちゃって、でもなんだか楽しかったなあって、いいじゃないですか、それで」

「こういうのが盗撮のターゲットにされるんだな、納得だ」


はあっ!?

これにはかちんと来た。


「被害者に向かってそれですか。私が悪かったって言うんですか?」

「そういう話をしているんじゃないことくらい、わかるだろう」

「わかりません」

「あ」


さっきと同じように、伊吹さんがまたなにかを見つけた。

今度はなんだろう、と同じ方向を向いたものの、照明の落ちたアウトレットしかない。


「なにかありまし…あれっ?」


顔を戻したら、隣に彼の姿はなかった。焦ってきょろきょろしているところに「こっちだ」と背後から声がかかる。

慌てて振り返ったら、いつの間にか移動した伊吹さんが真後ろにいた。

間抜けな姿を見られ、ぶすっとふくれて彼に向き直る。


「わかったか」

「どうせ単純バカです」

「隙を見せるなって話だ」


さっきのは、ただの引っ掛けであって、隙とかそういうのとは…。

ぶつぶつ口の中で文句を言っていたら、「言いたいことがあるならはっきり」と叱られた。


「隙くらいあったっていいと思います。人間なんだから」

「危機意識を持てと言っている」

「だって、今は伊吹さんが一緒ですし」
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