クリスマスが終わる瞬間も
「うちに優しい人は難しいんかな」


許してくれる人。受け入れてくれる人。求めているけど、でもうちって中身こんなんやん。そしたらもう、常識的な相手には理解ができひんのやろね。

直人は幼馴染やから、ずっと一緒やったから気にせんといてくれるだけ。普通はそんなん無理なことくらい、ほんまはわかっとんのや。


「お前は、優しいやつが好きなんか」
「え?まぁ、うちは甘やかして欲しいし」


高望みでもなんとでも言えばええ。うちの好みは自由やもん。

あーあ、と手をついて天井を見上げれば、知らんうちに近づいとった直人の影が落とされる。


「それって優しくすれば、俺でもええってこと?」


思いもせんかった言葉に目を見開く。え?と声がもれて、いつも以上に身長差の広がった直人を見上げる。


「いやいや、なに言うてんの」


どうしたお前、とうちが眉間にしわを寄せると、うわ、軽くキレとる。なんやこいつ。

うちが珍しく落ちこんどるからって気のつかい方がおかしい。そういうことは言わんでええのに。


「昔からずっと、お前は俺のことだけは見んかったもんな……」


ぽつりと落とされる言葉は冗談にしか思えへん。せやのに、そんなふうに真剣な表情で言われるから否定できんくなった。

じりじりと追いつめられるような感覚に身体が火照る。おかしいな、さっき飲んだワインが回ったんかな、なんて自分でも見当違いだとわかることを考える。

だってそんなん、信じられへん。今さらうちらの間で変わることってある?


「あんた、うちに優しくする気あったん?」
「そもそも俺はお前にだけは優しいっつーの!」


とん、と肩を押されれば、かんたんに揺れてふかふかのベッドに身体が横たわる。あまりにもあっけなく、うちは呼吸をするだけで精一杯。

なにしてんのと思うけど、どうもできひん。これがお前の優しさなんか!


「彼氏と別れた時は慰めたし、引っ越しも手伝ったし、お前の呼び出しは断ったことないやろ」
「まぁ、うん」
「……必死で優しくしてんねん、これでも」


そんな切なそうな顔せんといて。こんなにも直人は苦しそうやのにうちの胸の中には、甘い感情が広がる。

ああ、ほんま最低。……想われることが、幸せや。


ずっと一緒におったもん、誰より気を許せる相手やもん。嫌いやないよ。……当然やん。

まぁ、悪いけどそんなふうに思ったことこれっぽっちもなかったけど!いくらうちでも気持ちの切り替えが難しい問題やけど!

でもきっと今まで直人を無意識に傷つけていた。そんなんはもうしたくない。
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