ひとりピクニック
さすがに退屈になってきてあくびをかみ殺す。
なんとなく時計を見ると、もうとっくに一三時を過ぎていた。
家を出たのは八時前だったのに。
飛行機に乗れば二時間たらずで北海道から東京へだって行けるのに、一日に数本の鈍行列車しか走らないこの地域では、時間の流れがまるで違う。
私はバスケットの中から銀紙でくるまれたサンドイッチを取り出し、窓際の小さなテーブルの上に置いた。
魔法瓶に入れていたコーヒーは、まだ微かな湯気をたてていた。
切り目の入ったソフトフランスパンは、挟んだクリームチーズの水分を含んでしっとりと柔らかくなり、その上に散らしたローストアーモンドは口の中でパリパリと音をたてて砕ける。
平日の昼間にこうやって一人で列車に乗ってお昼を食べているなんて。
まるでピクニックみたいだな。
なんてのんきに考えながら、微かに開いた窓から吹き込む風に目を細める。
がたん、かたん。
その時、一瞬目の前が真っ暗になり、車内に轟音が響いた。
「……っ!?」
驚いて立ち上がると、あっという間に辺りはさっきまでの明るい景色を取り戻し、何事もなかったように列車はのんびり東へ向かう。
不思議に思い窓から後ろを眺めると、海に突き出すように切り立った崖の下に小さなトンネルが見えた。
なんだ。
トンネルの中を通っただけか。
ほっとしてまた座席に座ると、いつの間にか目の前に四、五歳くらいの女の子が座っていた。