一人の部屋と二人の夜

電話しようか。メールだけ送ってみようか。
何て言う?会いたいからそっちに行ってもいいって?

ぐるぐると同じことを考えてはやめ、考えてはやめ、そうして今に至る。


座り込んだベッドの上、すぐ横に置いてある携帯を見て、着信がないことを確認してため息をついた。
こんな風に会いたいと思っているのは私だけなのかもしれない。

だけど、じゃあさっきの言葉の意味は何なのだろう。
先に期待させるようなことをしたのは間違いなく向こうなのだ。直接気持ちを言ってくれたことはないから確信は持てないけれど、同じ気持ちだと期待するくらいは許されるだろう。


今日、この夜を逃したらきっと明日からも変わらず、ただの同期だ。
何かを変えるなら今ここで踏み出さなければ、曖昧な関係のままずるずるしてしまいそうな気がする。
そうしたらどんどんタイミングを逃して、いつかものすごく後悔する日が来るかもしれない。

明日の朝にホテルの二階で朝食をとる時まで会わないとすると、私の勇気は今よりもっと萎んでしまうことだろう。


「……ああ、もう!」

ベッドから立ち上がり、見事な夜景へと近付いていく。
大きな窓に手を当てるとひんやりと冷たくて、いつもより自分の体温が上がっているような気がした。


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