泣いて縋ることができたら、こうはならない。
泣いて縋るくらいなら、これでいい。
大人になれば誰だって恋を失うことがある。
何もせずに受け身のまま初めての恋を実らせるのはフィクションで、フィクションを求める人もいれば、そうじゃない人もいる。
たったひとりでハイクラスの部屋でカップアイスを食べる。広がる甘さに涙が出る。なんだこれ数年前の私じゃん、と思い当たる女は絶対に少なくない。
そう、泣くのは今夜だけ。
大きなバスタブに埋まって上等なアメニティを贅沢に使って、明日にはきっと涙は止まる。
そしてまた、他の誰かを好きになる。
(私は読了後にハーゲン食べました。美味しかった)