聖なる鐘が響く頃
「ちょっとー、何も言ってくれないの?」
実希に肩を揺さぶられ、ハッと我に返る。
ライブに夢中になっている周囲の客たちはアンコールの拍手をしていた。
演奏者たちはそれに応え、もう一曲披露するようだ。
「あ、あぁ……おめでとう。」
落ち着け、と心の中で自分に言い聞かす。
「へぇ、実希が結婚か。そっか」
手が震えないように細心の注意をはらいながらグラスの水を飲み干した。
「いつ引っ越すの?」
「年明けたらすぐ。もう辞表も出してあるの。有給溜まってたから最後に全部消化して、年内で出勤は終わり。」
「……」
「急すぎてちょっとイヤな顔されたけど。あ、最後の曲終わったね」
実希はステージの方を振り返り、盛大な拍手を送っていた。
「ほら、洋太も!」
「あぁ。……うん」
止めなきゃ良かった。
実希のお代わりを止めなきゃ良かった。
そうすれば
あと一杯分、一緒にいられたのに。
実希に肩を揺さぶられ、ハッと我に返る。
ライブに夢中になっている周囲の客たちはアンコールの拍手をしていた。
演奏者たちはそれに応え、もう一曲披露するようだ。
「あ、あぁ……おめでとう。」
落ち着け、と心の中で自分に言い聞かす。
「へぇ、実希が結婚か。そっか」
手が震えないように細心の注意をはらいながらグラスの水を飲み干した。
「いつ引っ越すの?」
「年明けたらすぐ。もう辞表も出してあるの。有給溜まってたから最後に全部消化して、年内で出勤は終わり。」
「……」
「急すぎてちょっとイヤな顔されたけど。あ、最後の曲終わったね」
実希はステージの方を振り返り、盛大な拍手を送っていた。
「ほら、洋太も!」
「あぁ。……うん」
止めなきゃ良かった。
実希のお代わりを止めなきゃ良かった。
そうすれば
あと一杯分、一緒にいられたのに。