聖なる鐘が響く頃
駅が見えてきた頃、突然そう言われた。


「ずっと近くにいるのが当たり前だと思ってたよ」


無理矢理冗談にしようとするみたいに、実希は明るく笑う。



「何言ってんだよ。結婚決まって一番幸せな時だろ」

「幸せだよ。幸せだけど……」



彼女の歩みはだんだん遅くなっていき
やがて完全に停止した。




「どうしよう。すごく淋しい。こんな事言ったらダメだよね?」




顔を上げた実希の瞳は涙で潤んでいた。




……やめろ、


やめろよ。

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