聖なる鐘が響く頃
「結婚式には絶対来てよね。一番近いところに座ってもらうんだから」


終電間際の駅構内は人でごった返している。

実希の言葉に何の反応も示せないまま
次々と改札に吸い込まれていく人達ばかりを目で追っていた。


「そろそろ行かないと。乗り遅れるぞ」

「……うん」


どちらからともなく繋がれた手の力が
どちらからともなく弱められる。



「洋太、」

「ん?」

「大好きだよ。」



泣きながら笑っているから、実希はおかしな表情になっている。

言葉より確かな『さよなら』が俺の心をぶっ壊す。





「……行けよ。早く」





俯いたまま、ほとんど押し出すようにして手を離した。
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