聖なる鐘が響く頃
「実希(ミキ)」
左手を挙げ合図を送ると、彼女はすぐ俺に気が付いた。
ぱっと花が開いたような笑顔で手を振り返してくる。
「ごめん。遅れちゃった?」
「いや。ギリギリ大丈夫」
「あー、何呑もう……シャンパンでいいかな。」
近付いてきたバーテンダーに注文を終え、実希はコートを脱いだ。
パステルブルーのタートルニット。
その胸元で一粒ダイヤのネックレスが揺れている。
「こんな高級ホテル、初めて入った。」
「俺も。今日のジャズライブ、うちの会社も協賛なんだよ。だから招待券二枚手に入ったってわけ」
「クリスマスなのに?すっごーい。バーだけ利用するために入ってもいいんだね」
「俺の給料じゃ逆立ちしたって泊まれねーよ」
きゃはは、と笑う彼女の指先に目が留まった。
「お。ネイル変わった」
「わかる?はい、乾杯。」
運ばれてきたシャンパンを、実希はさっそく口に含んだ。
合わせたグラスの表面を水滴が滑っていく。
「さすが洋太(ヨウタ)。彼氏だって気付いてくれないのに」
彼女がグラスをテーブルに戻したと同時に、店内の照明が落とされた。
左手を挙げ合図を送ると、彼女はすぐ俺に気が付いた。
ぱっと花が開いたような笑顔で手を振り返してくる。
「ごめん。遅れちゃった?」
「いや。ギリギリ大丈夫」
「あー、何呑もう……シャンパンでいいかな。」
近付いてきたバーテンダーに注文を終え、実希はコートを脱いだ。
パステルブルーのタートルニット。
その胸元で一粒ダイヤのネックレスが揺れている。
「こんな高級ホテル、初めて入った。」
「俺も。今日のジャズライブ、うちの会社も協賛なんだよ。だから招待券二枚手に入ったってわけ」
「クリスマスなのに?すっごーい。バーだけ利用するために入ってもいいんだね」
「俺の給料じゃ逆立ちしたって泊まれねーよ」
きゃはは、と笑う彼女の指先に目が留まった。
「お。ネイル変わった」
「わかる?はい、乾杯。」
運ばれてきたシャンパンを、実希はさっそく口に含んだ。
合わせたグラスの表面を水滴が滑っていく。
「さすが洋太(ヨウタ)。彼氏だって気付いてくれないのに」
彼女がグラスをテーブルに戻したと同時に、店内の照明が落とされた。