やさしい夜
オジサンはかわいい。
今日もちょこんと座っている。
少しよれよれの背広(スーツといううより背広!)と、
くたくたのカバン。何が入っているのか、重たいカバン。
待ち合わせなのに、携帯を気にすることもなく、ぼーっとしている。
オジサンだいすき!と抱きつきたいのを我慢して、肩をポンポンと叩く。
ゆっくり振り向いた、その顔がまた大好きなんだ。
「早かったね。少し歩こうか。」
オジサンは、言葉少なめに、雑踏を後にする。
少しひとの少ない路地に入り、ゆっくりと歩く。
私とオジサンは、いつもこんな感じ。
嘘だと思うかもしれないが、会って歩いて、ご飯を食べて。
それだけなのだ。
私は、手もつなぎたいし、キスもしたいけど、
それはいけないこと、とオジサンは言う。ぐっと我慢だと。