囚われた花嫁
夕飯の用意が出来たが、食べるにはまだあまりお腹は空いておらず、少し勉強をしてからと思い、部屋に戻る。

一時間程勉強すると、お腹のムシが、騒ぎ始めたので、夕飯を食べることに。

一人分の夕飯を用意し、食卓につく。

「…いただきます」

手を合わせて、そう呟き、食事を始める…一人なんて、ちっとも楽しくない。

「…美味しいのに、不味い」

言葉に出さなければよかったと、後悔する。ポロポロと、涙が落ちた。

誰でもいいから、傍にいてほしい。

友達を呼びたくても、この家には、呼べない。結婚してることは、誰にも言ってないから。

パタン。

近くでドアが閉まる音。

私は驚いて顔をあげた。

「…ぁ…おかえり、なさい」
「…」

只今の時刻、午後8時。星空が仕事から帰って来たようだ。

私の言葉に、返事することもなく、ちょっと不機嫌な顔の星空が近づくなり、突然手を伸ばしてきた。

驚いた私は、体がビクッとなる。

…星空が、私の涙を指で拭った。

「…食事をしながら、泣くヤツがあるか」
「…」

「…俺の分の飯は?」
「…食べるんですか?」

星空の言葉に驚く。

「…ないならい「…あ!あります。手を、洗ってきてください。直ぐに、よそいますから」

私は慌てて立ち上がるとキッチンに向かった。星空は、洗面所に手を洗いに行った。

…一人じゃなくなった夕飯。寂しくなくなった。でも、相変わらず静かで何とも言えない空気…あ。


「…あの」
「…なんだ?食事中は静かに「…ありがとうございました」


突然のお礼の言葉に、箸を止めた星空が私を見た。
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