囚われた花嫁
「…何の礼だ?俺は何もしていないが」
「…学費です。本当なら、自分でバイトでもして払わなきゃいけないのに」

私の言葉が気に入らなかったのか、少し私を睨む星空。

「…バイトなんてものは、するな。許さない。星は俺の嫁だ。金で困ったときは俺に言え、いいな?」

「…はぃ…」

『星は俺の嫁だ』

その言葉に驚く。…お前とか、アンタとかじゃなく、『星』と呼んでくれた。しかも、俺の嫁だとも。

その言葉が嬉しいなんて、なんて単純なんだろうと自分でも思うが、嬉しいものは、嬉しい。

…そう言えば、もうひとつ気になることがあった。

また食べ始めた星空に、言う。

「…もうひとつ」

それに答えることなく、星空はご飯を食べる。それを気にせず、私も言う。

「…このネックレス、東條社長が?」

首に付いたネックレスを持ち上げて見せると、星空は咳き込んだ。

「…だ、大丈夫ですか?」

私はさっと立ち上がり、星空の背中を撫でる。

「…気に入らなければ捨てて構わない」

咳き込みながら、星空が言う。…やっぱりこれをくれたのは星空だった。…ん?

待てよ?星空は、私が寝てるときに部屋に入ってこれを付けたことになる。…わわわ。寝顔を見られた。そう思っただけで顔が熱くなる。

「…どうした?」
「…い、ぃえ、あの…ありがとうございます。大切にします」

赤い顔を照れ笑いで隠しながら、礼を言った。

「…星」

真っ赤な顔の私に触れた星空。驚いた私は、後退りしつつ、席に戻ると、何事も無かったように、食事を再開した。…終わるまで、一度も星空の顔は見れなかった。
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