囚われた花嫁
しゅんとしたまま、食事を済ませ、片付けをすると、お風呂に入った。

自分の部屋に入ると、椅子に座って教科書を開いてみた。

今の状況で、勉強なんてする気にならない。それじゃあ、本でもと思い、適当な本を開いてみる。

パラパラとめくってみるも、頭に内容が入ってこない。

眠りたいけど眠くない。

音楽でも聞こうかな。イヤホンをして、好きな曲を聞き始めると、少しばかり、落ち着いた。

椅子に座ったまま、目を閉じて、音楽に耳を傾ける。

どれくらいそうしていたのか…

静かな音楽にウトウトし始めた時、突然体が宙に浮いた。

温かくて、ユラユラと揺れが心地いい。

その数秒後、フワリと温かい布団に包まれた。

うっすらと目を開けると、ぼんやりと、星空の顔が見えた。その顔は、穏やかで優しい顔。

そんな顔をしたまま、星空が私の頭をそっと撫でる。

幸せな気持ちになり、フワリと笑顔を見せると、星空も、笑みを浮かべた。

とても心地いい夢の中。私は静かに目を閉じた。

…朝、今日は日曜日。目覚ましはならない。でも、カーテンの隙間から注した光に片目を開けると、自分のベッドにいないことに気がついた。

「…ここは?…クマ、の、ぬいぐるみ」

ダブルのベッドに、クマのぬいぐるみを抱いて、眠っていた。

起き上がると、知らない部屋。

…もしかしてここは、星空の寝室?

覚醒して来た頭で、ようやく気づき、勢いよく起き上がる。

…星空の姿はどこにもない。日曜日だというのに、仕事で出ていった。

ここに私を運んだのは…星空?

カサッ。クマに、紙が付いていた。



『こいつと一緒にここで寝るといい』



…星空に似つかわしくない可愛いサプライズに、私はクマのぬいぐるみを、ぎゅっと抱き締めずにいられなかった。
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