囚われた花嫁
「…相変わらず、分かりやすい」

その言葉にどう返事をしていいものか困る。

「…まさか、アイツの事、好きなの?」
「…なっ、まさか!そんなわけないじゃないですか!」

星空は悪い人じゃない。でも、好きとかそんな相手じゃない。…好きになってはいけない人。そんな気がする。

自分の結婚相手なのに、なんでそんな事を思うのか。

「…星ちゃん、今晩暇?」
「…今晩、ですか?」

…今晩は、星空が出張に行ってから丁度1ヶ月。何の連絡もないけれど、今夜、帰ってくるかもしれない。

そう思ったら、夕食は準備しておいてあげたいと思ってしまう。

「…すみません、今夜はちょっと用事が」
「…アイツと会うの?」

「…ま、まさか」
「…よし、決まり。行こう」

「…え、あの、光先輩!」

私の言葉はスルーされて、光は私のてをとると、大学を連れ出した。

あちこち連れ回されたけど、どこも、私が好きそうな場所ばかり。元気のない私に笑顔が戻るのに時間はかからなかった。

…光はいつも、私を助けてくれる。

「…あの、ここに入るんですか?」

タクシーで連れてこられたのは、今までの場所とは全く違う場所。東條が経営するホテルだ。

「…こんなところは止めませんか?もっとこう普通の、ほら、高いし」

「…いいんだよ。家族割が利くとこだから」
「…家族割って」

普段からスタイリッシュな服装をしている光はいいが、自分はなんだか場違いな服装なので、気が引けたが。

光にてを引かれるまま、レストランに入った。

光を見た支配人は深々と頭を下げる。彼は、光の事を、よく知ってるようだった。

…楽しく食事を食べた私たちは、ホテルを出ようとロビーを歩いていた❗

…、少し離れたところに、綺麗な女性と腕を組んで歩く星空の姿が見えた。

美男美女で、絵になる。でも、見たくはなかった。

私は、光の影に隠れて、足早にホテルをでた。


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