囚われた花嫁
「…出ていってください」
「…出ていく気などない」

私は、星空にお金で買われた身。彼は、私を自分のおもちゃだと思っているのではないだろうか?

私は、人形じゃない。一人の人間だ。感情はある。

今は、星空と一緒に居たくない。

「…東條社長が出ていかないなら、私が出ていきます」

そう言って、起き上がったのだが…引っ張り込まれ、星空が私の上に馬乗り状態。

私はパニックになりながら、身動きすらとれず、星空を睨むことしかできない。

「…呼び方がもとに戻ったな」
「…下の名前で呼ぶ必要がありません」

「…何をそんなに怒ってる?」
「…別に怒ってなどいません」

「…1ヶ月も留守にしていたから寂しくて拗ねたのか?」

…それも、あながち間違いではない。でも、それは仕事なのだから仕方がないと諦めてるし。

そんな事よりもっと。

「…何がそんなに辛い?」
「…辛くなんて」

「…また泣いてる」

その言葉に、自分が泣いてることに気づかされる。動揺し、目線を泳がせると、星空は、私の涙を拭った。

私を拘束から解いたかと思えば、今度は抱き締めた。

「離して‼」

そう言いながら、モゾモゾと離れようとするが、星空が離してくれる筈もなく。

「…星、」
「…私なんてどうでもいいんでしょ?彼女のとこでもどこでも行っちゃえ‼」

ぎゅっと抱き締めていた星空の手が緩む。その手は、離さないまま、私を見下ろした。その目はとても驚いている様子。

「…何のことだ?」

…この男、いけしゃあしゃあととぼけやがる。勿論怒りは頂点に達した。

「…好きでもないくせに、こんなことしないで!私は貴方のおもちゃじゃない!」




私、星空が好きみたい…

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