囚われた花嫁
「…ホントに、買い込んだな」

買い物が終わると、両手に袋を抱え、星空が呟く。

私はクスクス笑いながら、それに答える。

「…だから言いましたよね?荷物持ちって」
「…予想外だ」

ちょっとゲンナリした顔の星空。会社では、きっと、いや、絶対こんな顔は見せないだろうなと、思わずにいられなかった。

荷物を車に乗せて、帰宅しようと私達も車に乗り込もうとした。

「…星ちゃん?」
「…光先輩」

…よりにもよって、星空と一緒にいるところを見られるとは。私はオロオロするしかなかった。

「…星、光と、知り合いだったのか?」

運転席側から、星空の声。その声に振り返れば、星空の顔が、明らかに怒っていて。

「…だ、大学の先輩です」

「…こんにちは、東條社長。お久しぶりです」

そう言いながら、私達に近づく光。星空は、運転席側から、私の方にやって来て、私の前に立った。

「…光、お前なんでここに?」
「…え?別に、ただ、買い物に来てただけですけど。用も済んだし、帰ろうと思ったら、たまたま、お二人に…ところで、東條社長と星ちゃんは、どう言ったご関係で?」

光の質問に、星空はほんの少し表情を変える。

「…お前に関係ない」

いつもと違う様子の星空を見た私は、この場を早く離れた方が良いような気がして、声をかけた。

「…すみません、光先輩。ちょっと急いでるので、行きましょう。…東條社長」

『星空』と、言ってはいけない気がした。

「…強気ですね、東條社長。いいんですか?星ちゃんに、あの事話しても?…アノ人の事を言っても」


そう言って、光は微笑んだ。

…星空は、顔を曇らせる。

…光は一体星空の何を知ってるって言うの?
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