囚われた花嫁
「…東條社長。言われたくなければ、俺の頼みを聞いてください」

「…」

「…星ちゃん。そんな男と一緒にいても、君は幸せにはなれない」

その言葉が、グサッと胸に突き刺さる。…どんなことが待ち受けているのか。私にはわからない。

…片想いでしかない私。星空は私の事なんて、なんとも思っていない。

星空の秘密を知ったとき、私は一体どうなってしまうんだろう?

「…星、行くぞ」

さっきまで笑顔だった星空の顔は、もう、そこにはなかった。


…。

無言のまま帰宅した私達。荷物を下ろしてくれた星空だったが、直ぐに自室に入って、そのまま出てこなくなってしまった。

数時間後、夕飯の支度ができて声をかけても、星空は出てこなかった。

夕飯の片付けをして、お風呂に入って出てきても、星空が部屋から出てきた気配はない。

そんなに重要な事なんだろうか?私が知ることは許されないのだろうか?

…自室に戻った私は、携帯で光にかけた。

「…もしもし」
「…うん、かけてくると思ったよ」

「…東條社長の事が知りたいんです」
「…それを知ったら、星ちゃんは、東條社長の事を嫌いになるかもしれないよ?」

「…嫌いになんて、なりません」

「…好きなんだね、東條社長のこと」
「…」

「…話すと長くなりそうだから、明日どこかで会おうか。大学が終わってからでも」
「…はい」

…電話を切って、ため息をついた。…深呼吸して心を落ち着かせると、相棒のクマを抱いて、ベッドに潜り込んだ。

…明日、私はどうなってしまうんだろうか。

不安は消えないまま、深い眠りに落ちていった。
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