囚われた花嫁
…何時ものように大学に向かった私は、何時ものように、講義を受ける。

友達と色んな話をしながら、時間はどんどん過ぎていく。

何時ものように過ごしているのに、心穏やかではない。

一日の勉強を終える頃、私は光にメールをした。

そして、待ち合わせ場所に向かう。

待ち合わせ場所は、大学の門のところ。

待ち合わせ時間より少し早く着いた私は、携帯を見ていた。

「…星」

その言葉に顔をあげた。

目の前のその人を見て、目を見開く。

「…どうしたんですか?…仕事は?」
「…星こそ、教授に用があったんじゃないのか?」

「それは…」

その時、向こうの方から、光が姿を表した。

「…東條社長、どうしたんですか?こんなところに」

驚きつつも、それを表に出さないように言う光。

「…星に、余計なことを吹き込まないように、先にここに来たまでだが?」

星空もまた、平静な顔で言う。

「…東條社長」
「…違うだろ、星。…呼び方が」

私を見おろすその瞳は、初めてあったときと同じ冷たい瞳。…私はどうしていいかわからず、一瞬躊躇う。

「…星空」

その呼び方に、満足したように、星空は微笑む。その微笑みさえ、冷たい。

「…星ちゃん、君と東條社長の関係って、一体」

光の言葉に、答えたのは星空。


「…星は、俺の妻だ」
「…なっ」

「…星にはもう金輪際近づくな」

そう言い捨てると、私の肩を抱き寄せ、車に連れていった星空は、私を強引に車に乗せると、その場を去った。
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