囚われた花嫁
…何度、母が傍に居てくれたらと願ったか。

…何度、抱き締めてもらいたいと思ったか。

…とりとめのない話をしたり、一緒にショッピングに行ったり。

…。


それからの私は、もう、なにも考えられなくて、自分の部屋に閉じこもったまま。


星空もまた、何度、私に話しかけようとしたか、何度、触れようとしたか。

でも、出来なかった。

好きになってしまった人からの、あり得ない告白に、もう、どうしていいかわからなかった。

受け止められると思った。

でも、出来なかった。…私って、なんで、こんなに心が狭いの?…いや、受け止められた方が凄いことなのかもしれない。

…何日もご飯も食べず、何日も眠れず、大学も無断で休んで。

ふと気がつけば、目の前には安住がいた。

「…安住さん」

「…お迎えに来ました。速水社長も、とても心配しておられます。こんなところにいては、星様がダメになってしまう」

仕事で来られない父の代わりに、安住が私を迎えに来た。

…私は、星空の住む、このマンションにはいられなかった。

…実家に帰ってから私は熱を出して寝込んだ。

先生曰く、風邪ではないと。

精神的なストレスから来る熱だろうと。

…熱も下がらず、食事もまともにとれず、仕舞いには、入院していた。

…意識が朦朧とするなか、目を開けると、いつもそこには、星空がいて、私の手を握りしめていた。

…こんな夢を見るなんて、私はどれだけ星空に想いを寄せていたんだろう。
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