囚われた花嫁
善は急げと言いたいところだが、仕事な合間に、星空は抜けて、墓参りに来ていたため、夕方改めて、家へ来ることになった。

「…星、ただいま。安住も連れてきたが、何をそんなにソワソワしてる?」

仕事から帰って来た父と、安住。

もう間もなく、星空が来る予定になっていた。

「…お父さんも、安住さんも、ここに座ってください」
「…仕事から帰って来て、早々なんなんだ?今夜は三人で夕飯を食べるんじゃないのか?お腹が空いてるんだがな」

父のもっともな言葉に、苦笑いを浮かべる。

すると、なにかを察したように、安住が助け船を出してくれた。

「…何か、お話があるんですか?」

「…そ、そう、そうなんです。とても大事な」


その時だった。インターホンが鳴ったのは。

私は慌てて玄関に向かい、ドアを開けた。

「…星空」
「…凄い慌てようだな」

そう言って、クスクスと笑った星空に、苦笑いを浮かべる。

「…速水社長と、安住さんは?」
「…さっき、帰ってきたところです」

「…お邪魔するよ」
「…はい…お願いします」

リビングに入ると、二人が同時にこちらを向き、目を見開いた。

「…ご無沙汰しております。速水社長」
「…星から手を引きなさいと、言ったはずだが?」

案の定、父の言葉は、冷ややかなものだった。

「…どうぞ、こちらへ」

招き入れてくれたのは、安住だった。

私と星空は、父と、安住の真向かいに腰を下ろす。


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