囚われた花嫁
その夜。四人で食事をし、食事が終わると、星空はマンションに帰った。

安住も自宅へと帰り、父と二人きりになった。

お風呂から上がった私は、ソファーに座り、本を読む父の後ろ姿が目に写り、思わず父の背中を抱き締めた。

「…どうした、突然。驚くじゃないか?」
「…ゴメンなさい…でも少しだけ、こうしてていいですか?」

私の言葉に、父は、私の手をそっと握った。

「…お父さん」
「…なんだ?」

「…私のワガママ聞いてくれて、ありがとう」
「…星は、本当に、手のかからないいい子だった」

優しくて大きな手。何かあれば、一番に私を助けてくれた手だ。

「…お母さんが居なくて、寂しい筈なのに、いつも笑顔で私を迎えてくれたな…一番大事な人を見つけたんだ。大事にしなさい」

優しい父の言葉に、涙が溢れた。

「…星空はとても大事な人よ。でも、一番は、今までも、これからも、お父さんよ。だから、何かあれば、何時でも言ってね?大好きよ。お父さん」

「…星から、そんな言葉が聞けるとは思わなかったよ」

…父の声が、微かに震えてる気がした。

「…お父さん、泣いてるの?」

顔を覗き込もうとしたら、ゴシゴシと目を擦った父が私の方を見た。

「…泣いてるのはどっちだ、全く」

そう言って父は、笑った。

「…だって」

父は笑いながら、私の頭を撫でる。

「…泣くくらいなら、ずっとここにいればいい」
「…お父さんの意地悪」

そう言うと、父は更に声をたてて笑った。


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