囚われた花嫁
星空の気配を感じながら、食事の用意を進めていく。

…時々、星空が居るのか、確認しようと目を向ければ、バチっと、目が合い気恥ずかしくて、笑ってごまかす私を、星空は優しい眼差しで見つめ返してくれる。

…初めてここに来たときは、怖くて冷たい人だと思っていたから、こんな風になって、驚いた。

でも、今はこうなって本当に良かったと思う。

…出来たスープの味を確認しようと、お玉に少しすくい、小皿に移して、飲もうとした。

「…あ」
「…うん、美味いな」

その小皿を、後ろから奪われ、振り返ると、星空がいて、スープを飲んで、感想を言った。

「…もぅ、驚くじゃありませんか?」

私の言葉に、星空はクスッと笑う。

最初の頃とは180度違う星空に、怒ることすら、忘れてしまい、困ったように笑った。

…あぁ、本当に、とても感情豊かな人だと思う。

こんな星空を知ってるのは、私だけなんだろうか?

もしそうなら、とても嬉しい。

…これが、独占欲と言うものだろうか。

「…もぅ、夕飯の支度は出来たのか?」
「…」

「…星?」

まじまじと見つめられ、ハッと我に返る。

「…は、はい。星空の仕事は?」
「…終わった」

「…そうですか。それじゃあ、お皿によそいますので、食べましょう」

「…あぁ、手伝う」

私が皿に料理を盛れば、星空が運ぶの連携プレイ。


そんな星空の何気ない優しさが、心に染みた。
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