囚われた花嫁
その夜、私と星空は、何度も愛を確かめ合い、朝まで離れることなく抱き締め合ったまま眠った。

…午前6時。

隣にある筈の温もりが無く、目を開けると、もう、スーツに身を包んだ星空が映った。

「…星空?」
「…悪い、起こしたか?」

星空の言葉に首を降る。

「…もう、仕事に行くんですか?」
「…今日は仕事が立て込んでて、今から出る。今夜は遅くなると思うから、先に寝てろ。いいな?」

…遅くなるのか。淋しいな。

その思いに比例するように、淋しげな顔をすると、星空は微笑み、おでこに口づけた。

「…出来るだけ早く帰るから」

そう言うと、寝室を出ていった。

星空がいなくなった淋しさを紛らわすように、布団にくるまる。

こうしてると、星空に抱き締められてるような気がしたから。

…今日は午後からの講義なので、午前中はのんびり出来る。

と言っても、家の用事をして過ごす。

用事を済ませると簡単な昼食を食べ、身支度をした。

その時だった。携帯がなり、それをとると、星空からだった。

「…もしもし、どうしたんですか?」
「…星、今家にいるか?」

「…居ますけど」
「…悪いんだが、俺の書斎に入って、デスクの上にある茶封筒を持ってきて欲しいんだが、持ってこられるか?」

…大学に行くにはまだ余裕がある。

もし、時間がないとしても、遅れたって構わない。授業より、こっちの方が大事だから。

「…どこに持っていけばいいですか?」
「…うちが経営してるホテルに」


分かったと告げると、私は急いで、指定の場所に向かった。
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