囚われた花嫁
「…綺麗ですね」
「…うん、本当に」

なんの雑音もなく、二人の会話も無駄にしない。とても心地のいい空間。

くっつき過ぎないのは、光なりの心遣いなんだろう。

「…少しは元気でた?」
「…光先輩には敵わないなー」

そう言っておどけて見せる。

「…星ちゃんは今幸せ?」

今幸せ?…幸せだよ。好きな人に愛されて。好きな人の傍に居られて。

「…幸せですよ」

光の顔を見ないように、そう言った。

「…俺の顔見てちゃんと言ってよ。星ちゃんが本当に幸せそうな顔してたら、もう二度と、星ちゃんの前に現れない。ちゃんと諦めて、前に進むから」

「…」

光の顔を見ればいい。そうすれば、光は前に進んでくれる。

「…星ちゃん」
「…幸せですよ。それでいいじゃないですか」

顔を見られる前に、観覧車を降りればいい。もう、終わりだから。

薄暗い場所にいけば、もうこの顔は見られない。

扉が開けられた瞬間、光は私の顔を強引に自分に向けた。

「…?!」
「…そう、よく分かった」

「…お客さん?」
「…すいません、降ります」

光は私の手を取ると、観覧車を降りた。

遊園地で遊んで、光のおかげで、少しは元気になったのに。このままバイバイ出来ると思ったのに、まさか、最後にこんなこと聞かれるなんて思わなくって、今日、あんな場面に出逢わなければ、笑顔で言えてた筈の台詞は、泣いた顔でしか言えなかった。
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