囚われた花嫁
…マンションの中。重たい空気が流れる。

「…義兄さん、説明を」

私をソファーに座らせ、自分はその後ろに立った光が星空に説明を要求する。

「…彼女は、飯塚紗理奈。結婚式をプロデュースするプロデューサーだ。うちも、ホテルの結婚式のプロデュースを頼んでる相手だ」

…それでは、長い付き合いだろう。…公私ともに?

私はぎゅっと、手を握りしめる。

「…星、お前は俺と紗理奈が男女の仲だと勘違いしてるようだが?そんなの無理な相手だ」

星空の言葉にイラッとして私は言い返した。

「…星空はあの人と腕を組んで歩いてた。一度ならず、2度までも。凄く仲良さそうに」

言ったら辛くなって俯いた。

すると、星空は溜め息をつく。

「…さっき気づかなかったか?」
「…?」

「…彼女は交通事故で右足が不自由なんだ。右足を少し引きずって歩く。そんな彼女の杖代わりなんだよ。俺の腕は」

「…公衆の面前でしなくてもいいだろ?」

光が横から言う。

「…彼女は人前で杖をつくことを嫌がる。彼女なりのプライドだ。彼女がご主人と歩くときも、ご主人が彼女の杖代わりだよ」

「…ご主人て」

光が呟く。

「…紗理奈は俺の同級生、結婚式のプロデューサー。彼女には、愛してやまないご主人と、四人の子供がいる。そんな相手と男女の仲だと思うか?」

…私の思い込み。

分かった途端、恥ずかしさのあまり顔を覆った。


…星空を信用出来なかった私の落ち度。

光にも、

星空にも、

そして、紗理奈にも。


とんでもない迷惑をかけてしまった。
< 55 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop