囚われた花嫁
私は思わず口に手を当てる。

「…ゴメンなさ」
「…光はいつも、星の傍にいるから。いつか、取られてしまうんじゃないかと思うと、気が気じゃない。俺の方がオッサンだしな?」


「…そ、そんな事は」

慌ててそう言おうとしたら、星空が自分の口で、私の口を塞いだ。

ゆっくりと離れた唇。

星空は、困ったように微笑み、言った。

「…光の方が良くなった?」

私は左右に首を何度も降る。

「…私が好きなのは、一人だけです」
「…誰?」

分かってるのに、そんな事を言う星空。

「…星空」
「…良くできました」

私の言葉に、満足そうな顔をした星空。

「…星」
「…何ですか?」

「…どうして紗理奈が俺を星空って呼ぶのか知りたい?」

その言葉に頷いた。

「…旦那にヤキモチ妬かせるため」
「…?!」

驚きの答えに目を見開くと、星空はクスクスと笑った。

「…紗理奈は、旦那が好きですきで、しょうがない。俺はいいダシってわけ」

「…紗理奈って呼び捨てにしてるのも?」
「…困ったことに、同じ理由」

星空の言葉に、フッと、笑みが戻る。

「…やっと笑った」

安堵したように、星空が呟く。

そして、私の頭を優しく撫でる。

「…安心しろ。俺には星、お前だけだ」
「…疑ってゴメンなさい」

素直に謝罪すれば、星空は微笑み、首を降った。
< 57 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop