囚われた花嫁
私の誤解は解け、今までのような幸せな日々が戻ってきた。

が。

まだ、引っかかる事があった。

それは、紗理奈が私に会おうとしていた理由。

うやむやになったまま、日にちだけが過ぎていた。

「…星、出かけるぞ」
「…え?」

とある休日。星空が突然そう言ってきた。

理由を聞いても教えてくれず、ただ、付いていくしかない。

連れてこられたのは、星空の経営してるホテル。

「…星空」
「…あ、待たせてすまない」

私の手を引き、一人の人の前に。

「…貴女は」
「…1ヶ月ぶりかしら?誤解は解けて?」

そう言って微笑んだのは紗理奈。

私は苦笑しながら、頷いた。

紗理奈の向かいに座った私と星空。

「…星さん」

私の顔に自分の顔を近づけた紗理奈に驚いて固まる。

「…な、何でしょうか?」
「…こんな冷たい男でいいの?」

「…は?」

紗理奈の問いに首をかしげる。

「…年は上だし、冷たいし、なに考えてるか分からないし、口を開けば悪態ばっかりなこんな男の何処に惚れたの?」

「…」

酷い言われようだけど…

紗理奈の前では、いつも、そんな感じなんだろうか?

困惑顔で星空の方を見ると、その怖い顔に思わず口を真一文字につぐんだ。

「…紗理奈、星に余計なことは言うな」
「…あら、だって、私にはそうじゃない?」

「…仕事相手なんだから、シビアにだってなる」
「…星さん、星空は優しくしてくれる?嫌になったら、いい男の一人や二人、直ぐに紹介してあげるから」


星空の言葉なんか無視して言う紗理奈に、星空はご立腹。

二人は意外と仲がいいんだろうなと思うと、自然と笑みがこぼれた。

「…仲が良いんですね」

私はそう言って笑った。
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