囚われた花嫁
「…ま、無理か」

私はそう呟くと、掛け時計に目をやった。只今の時刻、午後6時。沢山動いたので、お腹が空いた。

家から持ってきた調理道具を箱の中から取りだし、あらかじめ用意しておいた調味料や食材をキッチンに運ぶと、勝手に料理を始めた。

「…ほんと、何にもないのね」

男1人だし、食事は全て、外で済ませてきているのだろう。調理道具なんてシロモノはないし、当然調味料もなかった。

…それから1時間後。夕飯の支度ができた。

「…さて。どうしようかしら」

星空が入っていったドアを見つめる。あれから一度も部屋から出てきていない。私の願いも、約束は出来ないと、言っていた。

でも…

私は、星空の部屋のドアをノックした。

「…夕飯の用意が出来ました。一緒に食べませんか?」
「…」

私の問いに応答はない。溜め息をつき、一人テーブルについた私は。

「…いただきます」

汁椀を手に取り一口すすった。…ぁ。

星空の部屋のドアが開いた。…ぁれ。キッチンに行った。…手を洗ってきたのね。

…。

食べた。…汁椀を置いた。…おかずに手を伸ばして食べた。

「…そんなに見られてると、食べにくいんだが」

星空に言われてハッとした。

「…ごめんなさい」

素直に謝罪して私もご飯を食べる。…しかし、静かだ。

でも、一人じゃない。
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