囚われた花嫁
…部屋に戻り、メガネをかけた私は、深呼吸をして心を落ち着かせる。その時、バタンと、玄関のドアが閉まる音。

「…仕事に、行ったのかな?」

ボソッと呟き、部屋のドアを開け、玄関の方を見る。先程の星空の姿はどこにもない。…玄関まで足を進めると、革靴はない。

「…朝ごはんは食べない派なのね」

なんて、呑気な事を口にする。

改めて、洗面所に向かった私は身支度を始めた。

「…何これ」

私は自分の首もとに手を当てた。

首には、見に覚えのないネックレス。寝る前にはしてなかった。これは、一体…

まさか、星空が?いや…そんなわけない。

気を取り直した私は、しっかりと朝食を取り、片付けを済ませ、大学まではまだ時間があるのでソファーに座ると、例の書類に目を通した。

1、食事は別々。2、掃除はしない(月、木ハウスキーパーが入る)3、干渉は一切しない。4、部屋に異性を連れ込まない

「…はぁ~~~~?!」

私は書類を両手で握りしめ、ワナワナと震えた。怒りが込み上げてきて。

「嘘でも何でも、仮にも結婚するんでしょ?何で、こんな約束事しなきゃいけないのよ!連れ込むわけないでしょ?」

…。

そんな怒りは、次の内容で一変する。

5、恋愛は自由。

…。

「…こんな結婚…承諾するんじゃなかった」

分かってるつもりだった。私はお金で買われたのだ。結婚なんて、ただの形でしかない。愛なんて、微塵もない。

でも…心のどこがで、まだ、歩み寄ることが出来るんじゃないかと思った…甘かった。
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