彼女は期待しない
タクシーを飛ばした先に見えたのは、あの日取材したプリンセスアワーズホテル。

高梨くんはそのホテルのレストランで待っている、というのだ。

こんなところ、恋人ですらない会社の同僚を待つような場所ではない。


「いったいどういうつもりなの…?」


とにかく行ってみないとわからない。

私は意を決してホテルに足を踏み入れた。


ボーイに案内され、レストランに着くと、窓際の席に見知った顔を見つけた。

―高梨くんだ。



私が来たことに気付くと、高梨くんは緊張しているのか、少しぎこちなく笑った。


「来てくれてありがとう」


「…打ち上げって言ってなかった?」


席に着いて疑問を投げかけてみると「そうだよ」という返事が返ってきた。


「努力家の藤堂さんに『頑張った賞』をあげたくて。二人だけの打ち上げだよ」


「ふふっ、なにそれ」


少しばかり呆れたが、悪い気はしなかった。
むしろ、ほんのり心が温かくなる。


「ここ最近、鬼のように仕事にうちこんでたよね。頑張ってるのをずっと見てたよ」

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