彼女は期待しない
私は仕事に生きると決めた。

だけど、なぜだろう。
今、高梨くんが何を決意しているのかを知りたい。


「聞きたいわ。聞かせて」


高梨くんの吸い込まれそうな瞳を前にして聞かないなんてできなかった。


「…藤堂さんって見た目に反して我が強いよね。一本筋が通ってるっていうか、決めたことはわき目もふらず頑張るタイプ。周りにあまり頼らないから、たまに危なっかしく感じるよ」


「…うん」


どうしてだろう。
ただ高梨くんが話しているだけなのに胸をギュッと掴まれているような感じがするのは。

高梨くんの声に胸が、喉が、切なく反応する。


「でも、僕はそんな藤堂さんが好きだよ。頼ってもらえる存在になりたいと思ってる。だから、僕と付き合ってくれないか」


最後の言葉が耳に届いた時にはもう声が出なかった。
凍りついた心が溶かされたかのように涙が溢れて止まらなかった。


「ごめん。泣かせるつもりはなかったんだけど。もしかして、迷惑だった?」

高梨くんは席を立つと私の席まで歩き、目線を合わせて優しく聞いてきた。
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