彼女は期待しない
「まぁ記念日に向けてみんな貯金はしているだろうけど。あとどうカッコつけるか、だよね」


「カッコつける?」


「うん。馴れてる人はいいんだけど、普段行ったことのない人はああいった雰囲気に気後れしないかな?」


なるほど。
お金の問題もさることながら、男性としてエスコートの仕方も気になるところなのか。

確かに無理にカッコつけようとすると、かえって変なことになりかねない。
せっかくの記念日に恥をかくのは避けたいものだものね。

これはホテル紹介の記事と共に載せておかないと。


ふむ、と頷いていると「お待たせいたしました」という声と共に注文した珈琲がテーブルに置かれた。

「で、藤堂さん。女性側の意見は何かある?」


呼びかけられて顔を上げると高梨くんが珈琲に砂糖を入れているのが目に入る。


角砂糖を一個、二個…さ、三個?
うわぁ…シャープな顔立ちによらず甘党なのね、高梨くん。


「藤堂さん?」


「あ、はい?」


「僕の話、聞いてる?」


「え?えっと…お砂糖の意見を聞きたいの?」


「お砂糖?そんな話してないよ。…って、藤堂さんは砂糖入れないの?」

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