彼女は期待しない
「私はブラック派なの」


缶珈琲ならともかく、ドリップした珈琲には砂糖やクリープは入れない。
そんなことしたらせっかくの風味が飛んじゃう気がするんだもの。


「へぇ~。顔に似合わず大人なんだね」


「…それってどういう意味?」


「あ、いや。藤堂さんって見た目可愛らしいから。てっきり甘党なのかと」


見た目可愛らしいから甘党。
いったいどこでそんな方程式が出来たのだろうか。

私はため息をひとつついてカールした毛先をくるりともてあそんだ。



―可愛らしい、か。



女性にとって誉め言葉のはずのそれは、私にとってはそうではない。


『お前は可愛いからすぐに次の男ができるよ』


少し前に別れた彼の言葉が脳裏に思い出される。
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