ニューハーフと私
第1章

隣のお兄ちゃん

記憶の片隅にある、少しの思い出。

だけどそれは、消えることのない素敵な思い出。

初恋だった。

小さな頃の、勘違いと本気の境目くらいの気持ち。

隣の家に住むかっこよくて優しいお兄ちゃん。

その頃学生だった彼は、友人や勉強に充てるはずだった休日を私にくれた。

一人っ子の私にとって初めは理想のお兄ちゃん。

しかし、時が経つにつれ、私の成長途中の小さな心臓はトクリトクリと大きく跳ねた。

小さいながらもそれを恋だと認識する。

そして小学校入学式。私はお兄ちゃんの家で、告白をした。

ーーーわたし、しょうらい。おにいちゃんとけっこんするねーーー

お兄ちゃんは優しく答えた。

ーーーじゃあ、こうしよう。大人になっても、気持ちが変わらなかったら、その時考えようーーー

あの時の言葉を彼は覚えてるだろうか。

そして未来の私も、それを忘れないでいるだろうか。
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