不器用な彼氏
『…でも、うらやましいなぁ、同じ職場に大好きな人がいるなんて』
『え?』
『私、彼氏とは、遠距離なんです。だから、なかなか会えなくて…櫻木さんが、うらやましい』
絶句する私をよそに、想い人のことを話す彼女はすっかり乙女モード全開で、今までで一番、輝いてみえた。
と、エントランスの方から『森下さ~ん、電話』と呼ばれ、
『あ、は~い。じゃ、戻りますね』
『うん、わざわざ呼び出してごめんね』
『いえ全然OKですよ』
業務に戻りかけ、途中もう一度振り向くと、両手の人差し指で小さく×を書くと、口元に寄せて、『絶対言いませんから』と念を押してくれる。
“なんだ…彼氏いたんだ…”
よくよく考えたら、あんな素敵な子にいない方がおかしいのかもしれない。その事実に、しばし呆然としていると、ポケットに入れてあったスマホにメールが入る。
彼からだ。開けると、相変わらず題名は無題で、本文に一言
【だから言っただろ?】
気配を感じ、急いで吹き抜けのフロアまで出て、階段の上り口まで行くと、2階へとつながる踊り場の先に、彼の大きな後姿が見えた。
もしかして、私がちゃんと言うのか、確認しに来たとか?
『信用してないのはどっちよ?』
そうつぶやきながら、その大きな背中を睨みつけた。
『え?』
『私、彼氏とは、遠距離なんです。だから、なかなか会えなくて…櫻木さんが、うらやましい』
絶句する私をよそに、想い人のことを話す彼女はすっかり乙女モード全開で、今までで一番、輝いてみえた。
と、エントランスの方から『森下さ~ん、電話』と呼ばれ、
『あ、は~い。じゃ、戻りますね』
『うん、わざわざ呼び出してごめんね』
『いえ全然OKですよ』
業務に戻りかけ、途中もう一度振り向くと、両手の人差し指で小さく×を書くと、口元に寄せて、『絶対言いませんから』と念を押してくれる。
“なんだ…彼氏いたんだ…”
よくよく考えたら、あんな素敵な子にいない方がおかしいのかもしれない。その事実に、しばし呆然としていると、ポケットに入れてあったスマホにメールが入る。
彼からだ。開けると、相変わらず題名は無題で、本文に一言
【だから言っただろ?】
気配を感じ、急いで吹き抜けのフロアまで出て、階段の上り口まで行くと、2階へとつながる踊り場の先に、彼の大きな後姿が見えた。
もしかして、私がちゃんと言うのか、確認しに来たとか?
『信用してないのはどっちよ?』
そうつぶやきながら、その大きな背中を睨みつけた。