不器用な彼氏
髪を軽く整え、平常心を取り戻すように大きく深呼吸をしてから、急いで階段を下りる。玄関フロアに海成と並ぶ長身の女性に、思わず同性なのにドキリとする。

スラリとしたモデル並みのスタイルと、小麦色の健康的な肌色、背中まである綺麗なウエーブヘア。

似てないと言ってたけど、端正な顔立ちは、やっぱり少し海成に似てる。

『こんにちは…あの、お邪魔してます』
『あ!菜緒ちゃん!菜緒ちゃんね?ね?』
『ハイえっと…菜緒ちゃんって、歳でも無いんですけど…』

思わず照れると、両肩をがっしり掴まれ

『あ~何だかイメージ通りだわ。普通の子で良かったぁ』
『普通の子?』
『オイッくだらない話すんじゃねぇ、先、行くぞ!』

海成は玄関先に置いてあった、大量の買い物袋を軽々と持って、さっさとリビングに向かう。その姿をお姉さんと並んで見送りながら

『何よ、正直な感想、言っただけじゃない?』
『?』
『あ、心配しないでね。この家に上がったのは、あなたが初めてなのよ』
『そう…なんですか?』
『意外?』
『あ、いえ』
『そうね、彼女なのかわからないけど、何度かあの子が女の子と一緒に歩いてるとこは、見たことあるんだけど、皆、何だか頭悪そうな感じでね』
『私もそんなに頭良い学校出ていませんよ?』
『やだ、そういう意味じゃないわよ』

そう言って豪快に笑う。

正直で嘘のない性格は、進藤家のルーツなのかもしれない。気取らずサバサバした感じが人を寄せ付け、太陽のような女性。これでは、弟である彼が頭が上がらないのも、納得。
< 112 / 266 >

この作品をシェア

pagetop