不器用な彼氏
時刻は間もなく午後11時。全く人気のない通りに、珍しく乗用車が通り過ぎ、それを機に、海成の手が解かれる。
『明日も仕事だ。そろそろ帰れ』
『うん』
『じゃあな…9時間後に職場で』
海成にしては、とびきり嬉しいジョークを言ってくれる。
…と、急にどうしようもない衝動にかられ、左右を見て、誰もいないことを確認すると、まさに出発しようとしていた運転席に身を乗り入れて、海成の右頬に、軽くキスをする。
いきなりの事に、目を見開いて、驚く彼をしり目に
『おやすみ』
と言うと、一度も振り向かずに、一目散に自宅に走った。
玄関を開けると、扉を背に、手の甲で自分の唇に触れて、鳴りやまぬ心臓の鼓動を鎮める。我ながら、馬鹿げた行動を起こしたものだ。
重症すぎて、手の施しようがない程のこの感情。
“ダメだ…もう好きが止まらない…”
数秒後、車の走り去る音が聞こえると、玄関先でしゃがみ込み、立ち上がるまでに、結局10分以上の時間を費やした。
『明日も仕事だ。そろそろ帰れ』
『うん』
『じゃあな…9時間後に職場で』
海成にしては、とびきり嬉しいジョークを言ってくれる。
…と、急にどうしようもない衝動にかられ、左右を見て、誰もいないことを確認すると、まさに出発しようとしていた運転席に身を乗り入れて、海成の右頬に、軽くキスをする。
いきなりの事に、目を見開いて、驚く彼をしり目に
『おやすみ』
と言うと、一度も振り向かずに、一目散に自宅に走った。
玄関を開けると、扉を背に、手の甲で自分の唇に触れて、鳴りやまぬ心臓の鼓動を鎮める。我ながら、馬鹿げた行動を起こしたものだ。
重症すぎて、手の施しようがない程のこの感情。
“ダメだ…もう好きが止まらない…”
数秒後、車の走り去る音が聞こえると、玄関先でしゃがみ込み、立ち上がるまでに、結局10分以上の時間を費やした。