不器用な彼氏
…アイツとこうなってから、既に7ヶ月が過ぎた。

この歳で、しかも自分の女を、半年以上抱けていないなど、我ながら【ヘタレ】と言わざるをえない。

思えば、アイツと付き合う前の自分なら、会ったその日のうちに…ということだって、正直ゼロではなかった。そもそも、その行為自体に、今まで特別な意味など考えたこともない。

そういった欲求を欲したとき、そこに相手がいたら、自然の理として行うだけのことだった。

当然、さすがに誰でも良いというわけじゃない。

後々面倒にならない相手、つまり交際又は交際が既に確定している女性、且つある程度経験のある“大人の女性”であることが、最低条件。

そういった意味でも、アイツは充分条件を満たしていたはずだ。

チャンスが無かったわけではない。職場では、毎日のように一緒の場所にいて、誘う機会もいくらだってあったはずだ。

正直、一人暮らしじゃないだけに、家に呼ぶわけにはいかないが、やりたいだけなら、その手のホテルにでも行けばいい。今までの女とだって、特別拒まれることも無く、スムーズに持っていけた。

第一、三十過ぎのいい大人が、女をホテルに誘うのに、何を躊躇することがある?しかも相手は、自分の女だ。
頭ではわかっているが、なぜか行動には移せなかった。

アイツとの交際は、今までのそれと勝手が違いすぎて、思った通りに進まない。

だからこそ、今日が待ち遠しかった。
もうすぐこの腕でアイツを抱けると考えるだけで、高鳴るこの鼓動。

俺はポケットに入っていた携帯用の灰皿を手にすると、持っていたたばこに火をつける。

待ち合わせ時間まで、あと20分。
ともすれば、走り出したくなる感情を抑えて、一呼吸し、アイツと出会ってから今日までのことを思い返してみる。
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