不器用な彼氏
案内された席には、宿の浴衣を着た海成が、グラスに注がれたビールを美味しそうに飲み干している。
『早いね、もう出てたんだ』
『ああ、最初は軽く…な。後で、また入る。ビール、お前も、飲むだろ?』
『うん、1杯だけ飲もうかな?』
目の前のグラスを持って傾けると、瓶ビールを注いでくれる。
店内に流れる、心地良い水のせせらぎが、真夏の夜の涼しさを演出してくれる。
注がれたグラスで軽く乾杯すると、改めて正面に座る浴衣姿の海成を見て、ドキリとする。
海成の着ているそれは、この宿の備え付けの浴衣なのだけど、濃紺地に市松カスリ柄で、温泉宿によくある安っぽさは微塵も感じられない。しかも、がっしりとした体格の海成が着ると、軽く男の色気を感じてしまうのは、気のせいだろうか?
私の視線に気づいて、『何だよ?』と、問われる。
『…浴衣、似合うね』
『は?皆、同じだろ』
確かに周りを見渡せば、店内にいるほとんどが、皆同じ柄の浴衣を着ていた。
とはいえ、やはり他の男性に比べたら、数段かっこよく感じてしまうのは、親ばかならず彼女バカなのか。
目の前には、海の幸をふんだんに使ったお料理が並んでいる。
まずは、前菜のお造りに手を付けると、さすが海辺の旅館で出されるだけのことはあり、新鮮且つ肉厚のお刺身はぷりぷりで、口の中でスッと蕩けてしまう。
『美味しい』
『俺には上品すぎる。明日の昼は、牛丼食いてぇ』
『言うと思った。ねぇ、お風呂どうだった?』
『そうだな…女の方はわからねえが、結構広かったな。内湯2つに露天が3…いや4つか』
『そんなに?一回じゃ、全部入りきれないね』
『温泉来たら、何度も入らなきゃな』
海成は里芋の煮物を食べながら、嬉しそうに言う。
本当は、二人にとって初めてのお泊りだし、ちょっと高級なオシャレなホテルとかも考えたけれど、やっぱり温泉にしてよかったのかもしれない。
『本当、お風呂好きだよね』
『嫌いなのか?』
『嫌いじゃないけど、海成ほどじゃないかな?』
『早いね、もう出てたんだ』
『ああ、最初は軽く…な。後で、また入る。ビール、お前も、飲むだろ?』
『うん、1杯だけ飲もうかな?』
目の前のグラスを持って傾けると、瓶ビールを注いでくれる。
店内に流れる、心地良い水のせせらぎが、真夏の夜の涼しさを演出してくれる。
注がれたグラスで軽く乾杯すると、改めて正面に座る浴衣姿の海成を見て、ドキリとする。
海成の着ているそれは、この宿の備え付けの浴衣なのだけど、濃紺地に市松カスリ柄で、温泉宿によくある安っぽさは微塵も感じられない。しかも、がっしりとした体格の海成が着ると、軽く男の色気を感じてしまうのは、気のせいだろうか?
私の視線に気づいて、『何だよ?』と、問われる。
『…浴衣、似合うね』
『は?皆、同じだろ』
確かに周りを見渡せば、店内にいるほとんどが、皆同じ柄の浴衣を着ていた。
とはいえ、やはり他の男性に比べたら、数段かっこよく感じてしまうのは、親ばかならず彼女バカなのか。
目の前には、海の幸をふんだんに使ったお料理が並んでいる。
まずは、前菜のお造りに手を付けると、さすが海辺の旅館で出されるだけのことはあり、新鮮且つ肉厚のお刺身はぷりぷりで、口の中でスッと蕩けてしまう。
『美味しい』
『俺には上品すぎる。明日の昼は、牛丼食いてぇ』
『言うと思った。ねぇ、お風呂どうだった?』
『そうだな…女の方はわからねえが、結構広かったな。内湯2つに露天が3…いや4つか』
『そんなに?一回じゃ、全部入りきれないね』
『温泉来たら、何度も入らなきゃな』
海成は里芋の煮物を食べながら、嬉しそうに言う。
本当は、二人にとって初めてのお泊りだし、ちょっと高級なオシャレなホテルとかも考えたけれど、やっぱり温泉にしてよかったのかもしれない。
『本当、お風呂好きだよね』
『嫌いなのか?』
『嫌いじゃないけど、海成ほどじゃないかな?』