不器用な彼氏
『京都から来たの?』
『おお、お姉さんすごいやん。大阪やのうて、うちが京都やて、何でわかったん?』
『あ~なんとなく…かな?』

言われて、久しぶりに5年も前に別れた、京都出身の元彼を思い出す。

温厚な人柄だったけれど、そういえば、地元愛に強く、関西弁について語るときは、京都弁と大阪弁の違いについて、熱く語ってたっけ?

もう随分前の話で、すっかり忘れていたけれど、嫌な別れ方をしたわけじゃないから、元気かしら?と、懐かしむ。

『お姉さんも彼氏と旅行なん?』
『まあね』
『うちもや』

少し頬を赤らめながら、『一緒やね』と、嬉しそうに話し出す。

『うち、まだ学生なんやけど、向こうは社会人やし、なかなか時間あえへんから、この旅行は貴重やねん…』
『それなら、尚更気合が入るわね』
『この浴衣も、ちょっと子供っぽいきぃすんねんけど…背伸びしたかて、うち大人っぽいの、まだ似合わへんし』

さっきより少しだけトーンの落ちた声でつぶやく。好きな人の前では、出来るだけ綺麗でいたいのは、いくつになっても変わらないものなのかもしれない。
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