不器用な彼氏
『そうね、無理に合わす必要ないんじゃないかな?それに、あなた、その浴衣すごく似合ってるし』
『ほんま?』
『もちろん!…ハイ、出来ました!ほら、そこの鏡で見てみたら?』

帯の結びが完成すると、全身の映る姿見に自分を映し、クルリと回る。
彼女の初々しい浴衣姿に、こちらまで顔が綻んでしまう。

『わぁ、すごいわぁ』
『あ、そうだ!ちょっと待って』

ふと、彼女の少しビビットすぎる、ルージュが気になり、自分のポーチから、ローズ系のグロスを取り出すと、彼女の唇に少しだけのせてみる。

すると、元々の色が少し落ち着いて、尚且つグロスの持つ濡れたような艶感が出たことで、若さを残しつつ、女性らしい色っぽさが際立った。

『どうかな?この方が、グッと大人っぽくなったんじゃない?』

鏡をのぞく彼女の頬が、少し赤らんで、益々色気が増す。
彼女は、視線はそのままに『お姉さん、天才やわ』と、つぶやいてくれる。何でも大げさな子のようだ。
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