不器用な彼氏
『…そん時は立場上、誰にもバレないようにコソコソ付き合ってたから、姉貴も俺たちの関係は、知らないはずだ』
『…周りに秘密だなんて、それなら、今の私達と一緒……』
『全然違うだろッ?』
ちょうど、一番上まで上り詰めた頂上地点で、それまで足元ばかりを見ていた私は、視線を上げると、いつの間にか目の前で仁王立ちして、こちらを見詰めている海成に初めて気がつき、同時に視線が重なり合う。
咄嗟に目線を外すと、『逸らすな』と、叱られる。
『何だよ?もう十年以上前のことだぞ。今更だろう?しかも俺もまだガキだったし、つきあうって意味もよくわからない頃の話だ。少なくとも、今の俺とお前との関係とは、全く違う』
『……もちろん、わかってるよ』
『本当にわかってんのかよ?』
海成の苛立ちが、言葉の端々に含まれているのが見て取れた。
そんなことは百も承知だ。自分だって過去があるように、海成の過去の女にいちいち嫉妬していたらきりがない…。
私たちはもう、いい大人なのだから。
立ち止まってしまった私達の横を、宿の宿泊客が何組が、すり抜けていく。
明らかに痴話げんかしているのがバレバレで、酔った親父などは、ふざけ半分ですれ違いざま『彼氏ぃ~許してやんなさいよ~』と、からかうが、海成にジロリと睨まれ、蛇に睨まれた蛙のように、そそくさと退散していく。
『…周りに秘密だなんて、それなら、今の私達と一緒……』
『全然違うだろッ?』
ちょうど、一番上まで上り詰めた頂上地点で、それまで足元ばかりを見ていた私は、視線を上げると、いつの間にか目の前で仁王立ちして、こちらを見詰めている海成に初めて気がつき、同時に視線が重なり合う。
咄嗟に目線を外すと、『逸らすな』と、叱られる。
『何だよ?もう十年以上前のことだぞ。今更だろう?しかも俺もまだガキだったし、つきあうって意味もよくわからない頃の話だ。少なくとも、今の俺とお前との関係とは、全く違う』
『……もちろん、わかってるよ』
『本当にわかってんのかよ?』
海成の苛立ちが、言葉の端々に含まれているのが見て取れた。
そんなことは百も承知だ。自分だって過去があるように、海成の過去の女にいちいち嫉妬していたらきりがない…。
私たちはもう、いい大人なのだから。
立ち止まってしまった私達の横を、宿の宿泊客が何組が、すり抜けていく。
明らかに痴話げんかしているのがバレバレで、酔った親父などは、ふざけ半分ですれ違いざま『彼氏ぃ~許してやんなさいよ~』と、からかうが、海成にジロリと睨まれ、蛇に睨まれた蛙のように、そそくさと退散していく。